【民法改正】「所有者不明土地」問題解消と不動産の有効活用

はじめに

 不動産の取引や相続手続をしている際に、何十年も前に亡くなった人の登記となっていて、誰が相続しているのか分からない不動産と出会うことがあります。これにより土地が有効活用されず、近隣の開発が遅れ、不経済な状況が続いていることがあります。また、隣接地の建物や構築物が、何年も放置され、今にも崩れてきて被害が及んできそうなのに、誰が所有者か判明しないこともあります。

 これらの問題について、近時、民法が改正され、土地建物の有効活用や、近隣問題の解決に大きな前進が見られました。

 

現行民法

 現行民法では、隣接地に倒壊寸前の所有者不明の建物がある場合、自己の土地の所有権に基づき妨害予防を裁判上請求することになります。
 しかし、裁判は、とても手続的に“面倒”なものです。例えば、一番最初に訴状を送達しないといけませんが、そのためには相手方を明確にしなければならないのです。何度も相続が発生している場合には、だれを相手方にするのか・・・考えるだけでゾッとします。

 そこで、不在者財産管理制度や、相続については相続財産管理制度があります。
 いずれも、家庭裁判所が弁護士などのなかから管理人を選任し、この管理人に、財産の管理・保存を行わせる制度です(現行民法25条1項、952条1項)。

 しかし、これらの財産管理制度は、管理人が、財産全般を管理するため、管理人の報酬を含む予納金も50万円から100万円程度と高額になりがちで、個別の土地・建物だけ管理させたいときに、不便となっていました。

 

改正民法(来年4月1日~)

 そこで、改正民法では、隣接地の住民などの利害関係人が、管理人の選任を裁判所に請求して、特定の土地・建物に特化した管理早急かつ比較的安価に行わせる手続として、所有者不明土地・建物管理制度や、管理不全土地・建物管理制度を導入します。

 利害関係人としては比較的広く考えられており、相続が複層的に重なった結果、一部の共有者が不明となっているような場合の他の共有者や、その不動産を取得してより適切な管理をしようとする公共事業の実施者、対象不動産を時効取得したと主張する者等も含まれるとされています。

 例えば、不動産業者や宅建業者であっても、土地の権利の大半が集まったものの、共有者の一部が不明であるような場合や、古い分譲マンションの一部の所有者が不明で、取壊しの合意を取ろうとするような場合(ただし、要件次第では区分所有者の5分の4の賛成で決定はできます)、裁判所から、所在等不明共有者持分の譲渡の許可をもらい、所在不明者の持分の価格に相当する金額を供託することで、共有物件全体を第三者に売却できるようになります(改正民法262条の3)。また、共有物の管理についても、裁判所が一定期間の公告や通知を行った上で、所在不明者を除いた共有者の持分の過半数でおこなえるようになります(改正民法252条2項、改正非訟事件手続法85条2項、3項)。

 不動産業者、宅建業者、不動産管理会社にとっては、これまで扱いにくかった土地・建物を動かす、ビジネスチャンスが生まれるものと思います。

 とはいえ、裁判上の申立には、所有者の調査をしたが判明しないことや所有者の所在を知ることができなかったこと、及び管理の必要性について疎明する必要があり、大変な作業が発生することは変わりません。その過程で所在が判明する場合も少なくなく、所在が判明した場合には、結局、多数の相手と交渉が必要になります。

 

お知らせ

 今般、当事務所の弁護士・税理士 永井秀人が執筆に参加しました月刊「税理」(2022年4月臨時増刊号) 「所有者不明土地解消の法務と税務」がぎょうせいより刊行されました。今般改正のあった所有者不明土地に関する最新かつ有益な情報が網羅されておりますので、是非、お手に取っていただけますと幸いです。

 リンク:ぎょうせいHP

 

所有者不明土地に限らず、不動産の諸問題全般についてもリーズ法律事務所にご相談ください