【特定商取引法】通信販売のクーリング・オフについて

はじめに

特定商取引法は、消費者と事業者との間のトラブルを防止し、その救済を容易にするなどの機能を強化するため、消費者による契約の解除(クーリング・オフ)、取消しなどを認め、また、事業者による法外な損害賠償請求を制限するなどのルールを定めています(消費者庁・特定商取引法ガイド)。

ここで、クーリング・オフとは、契約の申込み又は締結の後に、法律で決められた書面を受け取ってから一定の期間内に、無条件で解約することです。

クーリング・オフの期間は、訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供・訪問購入について8日以内、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引については20日以内とされていますが、通信販売にはクーリング・オフに関する規定はありません。

このため、通信販売には、クーリング・オフが効かない、という話があります。
しかし、インターネットショッピングで、「思っていた色と違う」、「間違って買ってしまった」ということは往々にして起こります。消費者は、我慢しなければならないのでしょうか。
 
また、事業者は、これに常に対処しなければならないのでしょうか。

 

通信販売における契約の申込みの撤回又は契約の解除

特定商取引法は、その15条の3において、通信販売では、消費者が売買契約を申し込んだり、締結したりした場合でも、その契約に係る商品の引渡し(特定権利の移転)を受けた日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができると定めています。

この条文では、通信販売については、訪問販売等と異なり、消費者の自主性が損なわれる程度が小さいこと(つまり、消費者は商品をじっくり検討し、2段階でクリックして購入するのが通販では普通であろうということです)から、強行規定としていわゆるクーリング・オフを定めることはしませんでした。一方で、通信販売でも、返品や交換に関するトラブルは少なくないため、業者と消費者という両当事者にとって分かりやすい形での調整を行う必要があるとして、消費者に商品又は特定権利*の売買契約の申込みの撤回等を原則可能としました。

*特定権利の売買とは、施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるもの(スポーツ施設の利用権、映画、音楽等の芸術やスポーツの鑑賞権、語学のレッスン権)、社債その他の金銭債権、株式会社の株式、合同会社等の社員の持分その他の法人の社員権などです。
 

ですので、消費者は、間違って商品を買った場合、8日以内に、送料負担で返品して、契約の申込みの撤回ができます。

もっとも、事業者が広告であらかじめ、この契約申込みの撤回や解除につき、特約を表示していた場合は、特約によります。
例えば契約や約款で、申込みの撤回や解除ができないようにしてしまう規定をして、それに消費者の合意を得れば、申込みの撤回や解除の対象外となります。

しかも、通信販売の形態で、サービスを提供している場合は、この商品の売買契約または特定権利の売買契約に入りません。ですので、この場合も、申込の撤回等の対象外となります。
 
このように、通信販売事業者としては、申込みの撤回や解除の対象外とすることを望む場合、例えば、購入申込の際の購入者へのご案内や契約、約款において、一度購入する申込をすれば、撤回や解除ができないものであることを謳っておいた方がいいでしょう。
 

広告の表示規制

 また、特定商取引法は、その11条において、通信販売の広告において、申込みの撤回や解除に関する条件や返品特約を謳っておく必要があると定めており、通信販売事業者としてはこの点にも注意する必要があります。
 
通信販売事業者がしばしば用いるウェブ広告の場合、ウェブ広告に記載するスペースがないことのほうが多いです。
その場合は、広告からリンク先に飛ぶようになっているケースが大半だと思いますので、そのリンク先に、きちんとクーリングオフの対象外であることを示す内容が書かれているようにする必要があります。