【国税不服審判所】令和2年度における審査請求の概要の公表

国税不服審判所が、令和2年度における審査請求の概要を公表しました(リンク)。

はじめに

国税不服審判所は、課税処分に不服のある納税者から審査請求を受け、公正な第三者的立場で、課税処分を取り消すか維持するか否かの判断をする裁決を行っています。
特に一般の相談ごとを受けていますと、まだまだ国税不服審判所という組織が一般に知られておらず、国税局などと同じ建物に入っていることもあり、裁判所と比較すると、果たして公正な立場で判断してくれるのか疑問を抱く方も少なくないようです。

国税不服審判所で勤務した経験のある元国税審判官という立場からすると、まだまだ周知・アピールが足りないのだなぁと再認識するとともに、裁判所が、一般には高い信頼が寄せられている組織なのだと改めて認識する次第です。一般には、おそらく租税裁判所という組織にしたほうが分かりやすいのかもしれません。

また、審査請求は、税務署長や国税局長などが行った処分に不服がある場合に、その処分の取消しや変更を求めて、不服を申し立てる制度ですが、これについても、1年内終局処理や印紙不要などのメリットがあることも十分に伝わっていないと感じます(ですので、弊所では、丁寧に説明したり、さまざまなところでメリットをアピールしたりしています)。

 

令和2年度の状況

ところで、国税不服審判所は、納税者の利益救済のため、標準審理期間を1年と定めていて、これをかなり重要視しています。
しかし、令和2年度(令和3年3月末度)は、新型コロナウイルス感染症等の影響により、審査請求の1年以内の処理件数割合は83.5%となりました。これは、一般には大したニュースでもないのですが、国税不服審判所としては大きなニュースです。

コロナ禍ということから、担当職員が交代で自宅勤務をすることで職場での密集を避けていたため、内部の会議すらままならず、審理が停滞したのが見て取れます。国税不服審判所内では、外で見る以上に、案件処理のための内部検討手続きが多く、また所内でも所長をはじめキーパーソンが出勤しない、あるいはコロナにかかるとなると、一気に案件が停滞してしまいます。

審査請求の件数は2,229件で、前年度より13.0%減少となりましたが、これも、コロナ禍により、そもそも調査件数が減っていることが影響していると思われます(査察案件も、件数が大きく減ったという報道もありました)。この状況は、令和3年度も続くものと思われます。

他方、処理件数のうち、納税者の主張が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は233件(一部認容168件、全部認容65件)で、その割合は10.0%となりました。処理件数の母数の中には、ある意味で苦情めいた案件も含まれていることから、この割合は、概ね、例年通りといっていいでしょう(令和元年度は認容割合13.2%)。権利救済機関としての機能はコロナ禍にかかわらず(当たり前ですが・・・)きちんと果たしていたということでしょう。

 

令和3年度の状況

令和3年度においても、引き続き標準審理期間が低下することは大いに考えられます。年度後半には、ワクチンの接種も進み、徐々に自宅勤務体制も変わってくるものと思われ、どこまで令和4年3月末までに追い込みをかけられるかにかかっているといえるでしょう。

案件数は、さらに低下する可能性があります。これは調査件数が減っているためで、調査も少なければ不服の生じる処分も少なくなることから、やむを得ない帰結です。
他方で、色んな形で世の中に金がダブついており、不動産取引、金融取引も引き続き盛んであることからすると、これらに関する処分や、ここ近年盛んであったインバウンド関係の調査・処分は、調査件数の復調とともに、事件化してくるものと思われます。他方で、コロナ禍のあおりを受けた飲食・接客業や遊技場などについては(調査妙味が少なく)件数は減るように思われます。
また、税務署・国税局が、限られた人員で、手堅い案件をしっかり調査したうえで課税処分するうちは、税務署・国税局側の無理・拙速な調査による処分が減り、結果的に、案件数とともに認容件数が減ることにもつながりそうです。

 

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